【会社経営】組織づくり①:どんな組織の壁が現れるのか?

組織づくり①:どんな組織の壁が現れるのか?

 

採用、配置/配属、転属/転籍/転勤、組織設計、退職、パワハラ/セクハラなど、会社における人事の悩みは、業界問わず、また業歴や規模に関わらず、尽きないですよね。

 

創業初期には創業初期特有の悩みが、また従業員規模が大きくなれば、大きくなった特有の悩みが発生します。会社経営をし続けるということは、人事の悩みを持ち続けるということなんです。

 

一般的にも、会社の規模が大きくなるにつれて組織の壁が現れると、よく言われていますが、私もこれまで、4つの会社で、数人から数百人の組織に成長していく過程を見てきた経験してきて、『ほんとにその通りだよなぁ』と感じています。

 

 

今回は、私の実体験を踏まえながら、私が考える組織づくりについて、”組織づくり①:どんな壁が現れるのか?”をテーマに、

 

・人事労務でやらなければならないこと

・どんな壁が現れるのか

・組織に正解はあるのか?

 

について話をします。

 

もしかすると、一般的に言われている内容とは、すこし違うところがあるかもしれませんが、実体験ですから、参考にしていただけるのではないかと思います。

 

もくじ

人事労務でやらなければならないこと

 

まず、組織の規模によって、人事労務でやらなければならないことをおさらいしたいと思います。

 

人事労務の業務は、会社の規模によってやらなければならないことが増えていきます。これらは書籍などを読めばわかることですが、人事労務の基本となるところですので、復習も兼ねて、整理をしていきます。

 

従業員1人

 

会社を設立したら、まず手続きをしなければいけないものに、”社会保険への加入”があります。社会保険は、健康保険、介護保険、雇用保険、厚生年金保険、労災保険、5つの保険の総称です。

 

これらのうち、主に会社員を対象とする”健康保険”・”厚生年金保険”の2つを狭義の社会保険と呼んだりします。

 

健康保険は、病気やケガで病院にかかったときに、最大3割の負担で済むようにしてくれるもの、厚生年金保険は、老後や障害を負った、あるいは亡くなった場合などに保障を受けられるものです。

 

これらの保険は、1人でも雇用すれば適用事業所になります。法人では社長1人しかいない場合でも適用事業所となります。

 

適用事業所となったら、5日以内に 「新規適用届」を年金事務所に提出する必要があります。

 

また、従業員の雇用時、対象になるかどうかの条件がありますが、 「被保険者資格取得届」 「被扶養者届」を5日以内に、提出します。健康保険証は、通常、1週間程度で届きます。

 

労災保険は、パート・アルバイトを含め従業員を1人でも雇用すれば適用事業所になります。社長1人しかいない場合は、適用事業所になりません。

 

雇用保険は、労災保険加入者のうち、1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であり、かつ 31 日以上の雇用見込みがあれば、必ず加入しなければならないとされています。

 

労災保険の適用事業所となった場合は、10日以内に ”保険関係成立届”を労働基準監督署に、雇用保険の適用事業所となった場合は、10日以内に ”適用事業所設置届”をハローワークに提出します。

 

介護保険は、40歳以上の従業員が加入対象者です。介護保険の被保険者は、65歳以上の方(第1号被保険者)、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。

 

第1号被保険者は、原因を問わず要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができ、第2号被保険者は、加齢に伴う疾病が原因で、要介護認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。

 

 

また、法定三帳簿の作成が必要になります。法定三帳簿は、労働者名簿と賃金台帳と出勤簿で、労働基準法で備え付けを義務付けられています。

 

労働者を雇用した事業主は必ず備え付けておかなければならないいけません。いずれも保存期間は 3年です。

 

労働者名簿は、各事業場ごとに、 変更があれば都度訂正する必要があります。記載内容は、

 

氏名

・生年月日

・履歴

・性別

・住所

・従事する業務の種類

・雇入年月日

・退職年月日とその事由

・死亡年月日とその原因

 

です。

 

賃金台帳は、賃金支払いの都度、遅滞なく記入しなければなりません。記入内容は、

 

・氏名

・性別

・賃金計算期間

・労働日数

・労働時間数

・時間外/休日/深夜労働時間数

・基本給

・手当

・賃金の一部を控除した場合はその額

 

です・

 

出勤簿は、出勤簿に限らず、タイムカード以外にも勤務状況を示す書類が保存対象になります。記載内容としては、

 

・ 使用者が自ら始業/終業時刻を記録した書類

残業命令書及びその報告書

・労働者が記録した労働時間報告書

 

等になります。

 

 

従業員10 人

 

従業員を常時10人以上雇用する場合は、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出をする義務が発生します。

 

就業規則は、すべての労働者に対して、作成する必要があり、パートタイマーやアルバイト等の非正規の雇用労働者がいるのであれば、それらに対しても作成しなければいけません。

 

また、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場は、安全衛生推進者を選任する義務があります。安全衛生推進者は、労働者の安全や健康確保などに係わる業務を担当させなければなりません。

 

 

従業員50 人

 

従業員が50名以上になると、産業医の選任が必要になります。

 

産業医の役割は、会社で従業員が安全・健康に働けるよう、指導やアドバイスを行うことです。従業員が50名を超えた事業所は、14日以内に産業医を選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければいけません。

 

ひとつの会社で、従業員が50名を超える事業所が複数ある場合は、各事業所でそれぞれ、選任する必要がありますので、注意ください。

 

また、衛生管理者の選任も必要になります。

 

衛生管理者は、従業員の安全や衛生面を把握し管理する人です。選任には、衛生管理者の資格をもつ人であることが必要です。

 

合わせて、衛生委員会の設置もしなければいけません。

 

衛生管理委員会は、従業員の健康障害を防止するために、調査・審議・施策決定をする機関です。衛生委員会は、月1回以上、衛生管理委員が招集され、衛生上の問題や課題、改善案などを話し合います

 

衛生管理委員メンバーは、議長、衛生管理者、産業医、衛生に関する経験を有する者、その他従業員で構成されます。

 

さらに、定期健康診断報告書の提出が義務化されています。

 

健康診断自体は従業員の人数に関係なく実施しなければなりませんが、50名以上になったら、健康診断の診断結果を労働基準監督署へ報告する義務が生じます。

 

さらに、ストレスチェックの実施も必要になります。

 

2015年から義務化されたのがストレスチェックテストの実施です。従業員が常時50人以上の事業場では、毎年1回、このストレスチェックを全ての労働者に対して実施する必要があります。

 

 

従業員100

 

常時雇用する従業員が101人以上になると、事業主は、次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局へ届け出を行う義務があります。

 

一般事業主行動計画とは、従業員の仕事と子育てに関して、目標設定と目標達成のために施策、および実施期間を定めるものです。

 

また、2022年4月から、女性活躍推進法に基づく、自社の女性活躍に関する情報を公表も義務付けられています。

 

どんな壁が現れるのか

 

創業初期

創業初期は、会社運営自体がままならず、カオスな日々が続きます。

 

人材育成は後回しにして、即戦力が重要視されます。多くのタスクを少人数でこなさなければいけません。経験があるかどうか、あるいは得意か苦手かにかかわらず、やらなければ前に進まないからです。

 

創業メンバーの距離は近く、想いの共有が比較的できていて、大きなズレは生じません。

 

各自で判断し、それぞれの業務を遂行していき、とにかく少しでも早く前に進めるということが必要な時期です。

 

出来は70,80点のそこそこでいいけど、とにかくスピードが求められます。ですから創業初期のメンバーは、何でも屋さんが重宝されます。

 

従業員30人

 

従業員30人くらいで、創業以降、最初にぶつかる壁があります。

 

従業員が30人くらいまでは、個人のパフォーマンスによって、業務が進められることが多いということと、社内メンバーとの距離が近く、密にコミュニケーションが取れやすいということで、スピード感のある意思決定ができます。

 

しかし、従業員が30人あたりになると、コミュニケーションの濃度が薄くなり、創業メンバーと異なる価値観を持った従業員が少しずつ入ってくることによって、認識のズレが起こり始めます。

 

また、経験が浅いメンバーも増えてくるので、創業メンバーや主要メンバーの負荷が大きくなっていきます。

 

こうなってくると、組織コントロールの効率化および指示一貫性の観点から、複数のチームに分け、それぞれにマネージャーを配置することが必要になってきます。

 

いわゆる組織化のスタートです。

 

ただこの時、マネージャー人材の不足が問題になります。これくらいの規模だとマネージャーができる人材はまだ限られていますので、1マネージャーが複数のチームを兼務するという状態になります。

 

従業員50人

 

従業員が30人を超えて組織化されると、少しずつ複数の業務や事業が並行して進められるようになります。

 

企業としての安定感もどんどん増してきます。経営者にも気持ちの余裕が表れ、より長期的な視点で考えられるようになります。

 

30人から50人。たかだか20人増ですが、見方を変えると組織の規模は約2倍になるんです。

 

ますますトップから従業員たちへの意思疎通が難しくなり、距離が遠くなった分、意思決定のスピードが遅くなります。

 

また固定費が跳ね上がるのもこの時期に多いです。従業員が増えれば、人件費は当然ながら増えますが、それ以外にも、オフィスの増床など間接費用が飛躍的に増えていくからです。

 

しかし、経費の増加に合わせて、売上が増えていくわけではありませんので、計画的に業務をこなし、しっかりと売上げていける組織にしていかなければいけません。

 

すなわち、チーム管理能力の強化が必要なんです。

 

したがって、マネージャーの管理能力が重要になってくるんですが、業務が多岐に渡り、仕事量が増えるので、マネージャーの複数部門の兼務は難しくなります。

 

それを解消しようと、経験の浅い若手メンバーをマネージャーに大抜擢するということがよく行われますが、うまくいきません。何故なら仕事ができるからと言って、管理スキルがあるとは限らないからです。

 

一旦肩書きを与えてしまうと、適性がないからといって、あとで降格するのはなかなか難しくなるので、あまり焦って昇格してはいけません。

 

『マネージャーという肩書きを与える』ということではなく、まずは『チームリーダー的な役割を与える』という形で、適性を見定めることが大事だと思います。

 

またこの時期になると、正しく評価し、組織を作っていことが求められるので、人事制度の策定、評価システムの構築を進めていく必要が出てきます。

 

従業員100人

 

さらに50人を超えて組織が大きくなるにつれて、ピラミッド型の構造が大きくなっていきます。業務の属人性が低くなり、規程化やルール化が進んで、業務が安定していきます。

 

また、売上もそこそこ安定してくるので、社外からも信用が得られるようになり、採用などの面でもプラスに働くようになります。

 

しかし、スピード感はさらに低下し、体感がますます失われるようになります。

 

採用のミスマッチが頻繁に起こり、離職率が高くなる傾向があります。

 

また、専門性の高い従業員が増えて業務の属人性が低くなる一方で、創業初期に活躍していた何でも屋さんが窓際に追いやられるようになります。

 

会社の規模が小さいうちは、、業務が属人化していたので、何でも屋さんが重宝されていたのですが、この頃になると、スピードよりも高品質が求められるようになってきます。

 

そうすると、創業初期に活躍していた何でも屋さんは役不足になります。何でも屋さんは業務の品質という意味では、専門家には敵いませんから、居場所がなくなってしまうんですね。

 

居場所を失った何でも屋さんは、①専門知識を得る努力をするか、②ポジションを変更するか、③会社を去るか、の選択を迫られます。

 

誰もが会社の変化についていけるわけではありません。ゼロからイチのフェーズに合っている人もいれば、成長ステージで最も能力を発揮する人もいます。

 

自分の能力と会社の成長ステージが合っていないと感じて、初期メンバーが離職していくことがよくあります。これらはどうしても避けられないことです。会社が成長する中で最大の壁と言っていいかもしれません。

 

この時期に大事なのは、会社がより成長していくためには、優秀な専門家たちを集めて、各専門分野で能力を発揮してもらえるように、組織を再構築し、部署を超えたコミュニケーションを醸成する仕組みをつくることなんです。

 

したがって、この時期はどうしても離職率が高い傾向になりますが、それが採用のミスマッチで起こっているのか、あるいは、組織再編のために起こっているのか、を見極めることが大事です。

 

『なぜ離職率が高くなっているのか?』

 

後者のような理由であれば、ある程度は目をつぶらないといけませんが、前者のようなネガティブな原因なのであれば、しっかりした対応をしなければ組織が崩壊していくかもしれません。

 

 

組織に正解はあるのか?

 

前セクションで説明したように、会社の規模が大きくなるにつれて、組織の壁が現れます。

 

想いの共有から始まって、組織化のスタート、チーム管理能力の強化、組織管理の高度化の順に進んでいきます。

 

会社によって少しずつ違うとは思いますが、だいたい、30人、50人、100人くらいで、このような組織の壁が現れるんですね。

 

会社によって状況が違うことはあるんですが、確実に言えることがあります。

 

それは、どんな会社も、会社の成長ステージで、だいたい同じ道を歩んでいくということです。

 

会社が成長するにつれて、従業員に求める知識やスキルが変化していきます。また会社自身が向かおうとする方向が変わっていくこともあります。それらに合わせて、組織の形もまた変えていかなければいけません。

 

また、これらの解決方法、正解は、100社あれば100通りあります。

 

なぜなら、成長ステージ以外に影響するものがあるからです。

 

業種、取り扱う商品、そして従業員です。業種が同じ、取り扱う商品も同じ、成長ステージもまったく同じだったとしても、そこで働く従業員が違えば、正解は変わります。

 

人事の正解は各会社で違うものの、正解を見つける旅は永遠に続くということだと思います。

 

 

まとめ

 

今回は、私の実体験を踏まえながら、私が考える組織づくりについて、”組織づくり①:どんな壁が現れるのか?”をテーマに、

 

・人事労務でやらなければならないこと

・どんな壁が現れるのか

・組織に正解はあるのか?

 

について話をしました。私の実体験ですが、参考にしていただけたらと思います。

 

 

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wrote by ひさつぐ
(本名:丹田 久嗣(たんだ ひさし))

職業  :経営コンサルタント

業務内容:資金調達、上場準備、社外CFO、その他経営コンサル

活動地域:大阪、京都、滋賀、その他(要相談)

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