【資金調達】市場規模の具体的な見積り方

ベンチャー企業にとって、投資家からの資金調達は、融資と違って、返す必要がないお金なので、たいへん助かります。

 

しかし、そう簡単ではありません。金調達は想像以上に苦労をします。

 

投資家は、ベンチャー企業を評価するとき”商品”・”チーム”・”市場規模”の3つを重要視します。その中でも、”市場規模”を正確に表すのは難しいことです。

 

なぜなら、最先端技術で戦っているベンチャー企業は、ほとんどの場合、自社の商品が属する市場がないことが多く、現在どれくらいの市場があるのか?将来どれほどの市場に成長するのか?を論理的に説明しずらいからです。

 

その結果、せっかく良い商品を持ちながら、市場規模の見せ方が甘いがために、投資家から過小評価されるのは、非常にもったいないことです。

 

ですから、ベンチャー企業は、投資家から正しく評価してもらうために、正しく市場規模を表現することが大事なんです。

 

 

前回は、”市場規模をどう表現するか?”をテーマに、

 

・ありがちな市場規模の見積り

・3つの視点の市場規模

・投資家たちの本音

 

について話をしました。投資家がベンチャー企業の提示した市場規模をどう見ているのか?がわかったと思います。

【資金調達】市場規模をどう表現するか?

 

今回は、”市場規模の具体的な見積り方”をテーマに、

 

・市場規模の見積もり方のあれこれ

ボトムアップアプローチ

トップダウンアプローチ

・主要プレーヤーの売上合算

・市場規模の見積り現場の実際

 

について話をします。

 

これで、具体的な市場規模の見積り方がわかります。魅力ある市場規模で彼らの心を掴むことができるでしょう。そうすればきっと、投資家からの資金調達も受けやすくなるに違いありません。

 

もくじ

市場規模の見積もり方のあれこれ

 

市場規模を試算する方法として、5つほど挙げることができます。

【5分解説】明日からできる市場規模を見積もる方法(SPEEDA)

 

1つ目は、”ボトムアップアプローチ”です。これは単価×数量を積み上げていく方式です。

”トップダウンアプローチ”は、対象事業を包括する市場から、構成する要素をかけていき、対象市場を絞っていく方法です。

”主要プレイヤーの売上合算”は、先行する競合他社の売上と市場シェアなどから想定します。

”消費者便益の総数をもとにした試算”は、商品/サービスが導入されることによって、得られる便益を金額で表すもので、例えば、ソフトウェアを導入することで、効率化された時間と人件費単価をかけた数値が、その市場規模に当たると考えます。

”既存市場の代替率からの試算”は、既存の商品/サービスを置き変えていくと考えて、市場規模を測る方法です。

以降、

ボトムアップアプローチ

トップダウンアプローチ

・主要プレーヤーの売上合算

 

について、例を挙げながら詳しく解説ていきます。

 

ボトムアップアプローチ

 

先ほど紹介した、SPEEDAの資料でも例を挙げながら詳しく書いてありますので、そちらをみていただくのがいいと思いますが、ここでは簡単にどういうものかを説明したいと思います。

 

市場規模は、単価×数量で表します。

 

単価は、一般的な類似商品やサービスの情報、あるいは単価設定済みであればその数値を使います。

 

数量は、獲得可能なユーザー数を試算していくんですが、例えば、ターゲットが年収2000万円以上の東京に住むサラリーマンだった場合、総務省や厚生労働省やその他公的機関が発行しているデータを使って、獲得可能なユーザー数を割り出します。

 

 

このようにして、獲得可能なユーザー数を割り出してきて、あとは単価をかけるだけで、市場規模が算出されるという段取りです。

 

このボトムアップアプローチは、非常にわかりやすいので、もっとも有効な市場規模の見積り方だと言えますが、比較できる類似商品/サービスが存在していなかったり、ターゲットが明らかでなかったりすると、作れないです。

 

トップダウンアプローチ

 

亜鉛サプリメント事業(仮)の市場規模の見積もりを参考に説明します。仮置きした事業ですので、現実社会の事実と多少異なるところがあるかもしれませんが、あくまでも、考え方の説明のためですので、ご容赦いただければと思います。

 

亜鉛は、不足すると、いろいろと体調に支障をきたすと言われている非常に重要なミネラルです。ですから健康をキーワードに、全国民、あるいは成人が対象にしそうなところですが、より絞り込んで考えています。

 

 

例えば、薄毛の方の多くは、亜鉛が不足していると言われています。また、肌荒れやシワやくすみなど肌のハリコシにも亜鉛が大きく影響し、美容には欠かせないものだと言われています。

 

すなわち、亜鉛サプリメント事業のターゲットとしては、薄毛の方と美容に不安を感じている方々が挙げられます。薄毛で悩んでいる方は日本人男性のうち23%、19.4%がAGA治療を検討したことがある人です。

 

実際にAGA治療を受けている割合がわかりませんので、ここではこの半数の9.7%と仮定します。美容に不安を感じている方は日本人女性の29.3%であるというデータがあります。

 

 

 

人口データは総務省から出ています。そして、薄毛と美容不良の原因はすべて亜鉛不足とは限りません。他の原因もあるかと思います。原因に対する割合は、ここでは、亜鉛不足が原因は50%、その他の原因が50%と仮置きします。

 

ターゲットとなるのは、亜鉛が原因の場合で、美容に不安を持つの方々と、薄毛に悩みがある方のうち、まだ治療を行なってないあるいは治療を断念した方々です。赤枠で囲った範囲です。

 

ターゲットの人数を計算すると、日本市場規模は、 38,894千人×13.3%×50%+38,290千人×29.3%×50% = 8,196千人になります。

 

さらにこれを世界規模に拡大させると、世界人口規模は日本のそれの60倍ですから、491,760千人になります。

 

この数字に単価をかければ金額ベースの市場規模が算出できるという考え方です。

 

すなわち、トップダウンアプローチでの市場規模の見積りは、大きな市場、あるいは複数の市場の中から、ターゲットをあぶり出し、対象市場を絞っていくことで、見積もります。

 

主要プレイヤーの売上合算

 

ゴルフシャフト事業(仮)の、市場規模の見積もりを参考に説明します。こちらも、仮置きした事業ですので、現実社会の事実と多少異なるところがあるかもしれませんが、あくまでも、考え方の説明のためですので、ご容赦いただければと思います。

 

ゴルフというスポーツは古くからあり、ゴルフにまつわる市場はすでに存在しています。ですから当然ですが、誰でも容易に、ゴルフ用品市場に関するデータは入手ができます。

 

しかし、ゴルフシャフトという限定した市場のデータはありません。炙り出すのが非常に困難な状態です。このような状態の場合は、主要プレイヤーの決算情報と市場シェア情報、またその他専門家からの情報を組み合わせるんです。

 

主要プレイヤーの決算データ、ゴルフシャフトの売上高28億5,200万円に、日本での売上比率75.59%をかけて、日本での売上高21億5,584万円を出しています。

 

次に、ゴルフ業界に詳しい人からゴルフシャフトの平均単価12,800円というデータを入手して、同社の日本での売上高21億5,584万円を12,800円で割ると、日本での同社のゴルフシャフトの販売本数168,000本が出てきます。

 

それから同社の日本でのシェア45%で割ると、日本の市場規模374,000本が出てきます。

 

さらに世界のゴルフ人口分布から、日本市場の割合15%で割ると、世界市場250万本が割り出せるというものです。そして、この数字に単価をかければ金額ベースの市場規模が算出できます。

 

市場規模の見積り現場の実際

 

こちらは私が実際に経験した話です。

 

私は複数社と資金調達の交渉をしていました。取り扱う事業はまったくの新規事業で、この世の中に類似製品はありませんでした。この事業の市場規模の見積りに、私は、”トップダウンアプローチ”を使いました。そして各社の担当者に提示しました。

 

するとそのうちの2社から『この市場規模は信用できない』とクレームがつきました。

 

そう言う彼らは、新規事業が属する業界のトップを走る会社だったので、彼らの注文に対して真摯に受け止め、見直し修正をかけていきました。しかしどう修正しても納得してもらえませんでした。

 

そして彼らは、リサーチ会社の調査を求めてきました。当時、会社にそんなお金がありませんでしたし、他の会社には納得してもらえていたので、なんとか説得して出資に漕ぎ着けました。

 

その後、彼らの熱望により、2年後に改めてリサーチ会社による調査をしたんです。数百万円をかけました。

 

その結果、多少の条件が違うものの、ターゲットも市場規模もほぼ同じでした。我々の見積もりとリサーチ会社の見積りとに、大きく違いが出てこなかったんです。

 

そういう意味では、見積りに間違いはなかったということですが、何よりも強くお伝えしたいのは、このクレームをつけた会社は、リサーチ会社が出した結果も、素直には受け入れてくれなかったことです。

 

さらにです。

 

私は『じゃあ、あなたたちが出してみてください』とお願いしたところ、どうでしょう。『知見がない』とか、『調査に時間がかかる』などの言い訳を並べて、結局、出てきませんでした。

すなわち、市場規模の見積りに正解はないんです。専門家もわからないんです。お金をかけたから、リサーチ会社のデータだからと言って、正しいかどうかわかりません。

 

言い返すと、独自の、無料データであっても、ロジックをしっかり組んで説明できれば、それで十分なんだということなんです。

 

まとめ

 

今回は、”市場規模の具体的な見積り方”をテーマに

 

・市場規模の見積もり方のあれこれ

ボトムアップアプローチ

トップダウンアプローチ

・主要プレーヤーの売上合算

・市場規模の見積り現場の実際

 

について話をしました。

 

これで、具体的な市場規模の見積り方がわかったと思います。魅力ある市場規模で彼らの心を掴むことができるでしょう。そうすればきっと、投資家からの資金調達も受けやすくなるに違いありません。

 

 

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wrote by ひさつぐ
(本名:丹田 久嗣(たんだ ひさし))

職業  :経営コンサルタント

業務内容:資金調達、上場準備、社外CFO、その他経営コンサル

活動地域:大阪、京都、滋賀、その他(要相談)

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