【資金調達】市場規模をどう表現するか?
ベンチャー企業にとって、投資家からの資金調達は、融資と違って、返す必要がないお金なので、たいへん助かります。
しかし、そう簡単ではありません。資金調達は想像以上に苦労をします。
投資家は、ベンチャー企業を評価するとき”商品”・”チーム”・”市場規模”の3つを重要視します。その中でも、”市場規模”を正確に表すのは難しいことです。
なぜなら、最先端技術で戦っているベンチャー企業は、ほとんどの場合、自社の商品が属する市場がないことが多く、現在どれくらいの市場があるのか?将来どれほどの市場に成長するのか?を論理的に説明しずらいからです。
その結果、せっかく良い商品を持ちながら、市場規模の見せ方が甘いがために、投資家から過小評価されるのは、非常にもったいないことです。
ですから、ベンチャー企業は、投資家から正しく評価してもらうために、正しく市場規模を表現することが大事なんです。
今回は、”市場規模をどう表現するか?”をテーマに、
・ありがちな市場規模の見積り
・3つの視点の市場規模
・投資家たちの本音
について話をします。
これらを知ると、投資家がベンチャー企業の提示した市場規模をどう見ているのか?がわかります。投資家の心理がわかると、それに沿って彼らが知りたい市場規模を魅せることができます。
魅力ある市場規模で彼らの心を掴むことができれば、投資家からの資金調達も断然受けやすくなります。
もくじ
ありがちな市場規模の見積り
後発で、ある市場に参入する場合であれば、すでに市場が形成されているので、その市場の規模や各種情報は簡単に手に入れることができます。
しかし、業界初の技術や新しい切り口の商品/サービスである場合、市場が微妙にずれている、あるいは市場が存在しないということがあります。そんな時はどうしますか?あるいはどうされていますか?
私のこれまでの経験上、だいたい次の2つのパターンにまとめられるなと感じています。
一つ目が、新事業を包括する、入手可能な既存市場を持ってきて、適当に誤魔化しながら、説明する方法。
そして二つ目は、”市場がないから説明できないよ”と開き直る方法、です。
いずれもあまり良くない考え方です。投資家の評価は間違いなく低くなります。
投資家の投資目的を思い出してください。投資家は、安くで株式を買って、高くなった株式を売って、その差額で儲けることを目的としています。
対象の商品/サービスがたくさん売れて、会社が成長することを望んでいます。成長する会社に投資したいと考えています。
では彼らは、その会社が成長するかどうかをどこで判断するかというと、その会社の、チーム、商品、そして市場規模などの情報から判断します。中でも市場規模は最も気にするポイントなんです。
いくら創業者やチームが素晴らしくても、どんなに商品/サービスが画期的であっても、お客さんがたくさんいなければ、会社が成長するとは思えません。
ですから、彼らは、市場がどれだけあるのか?すごく興味を持っています。その市場が大きければ大きいほど魅力を感じます。もし市場の示し方が曖昧だったら、必ずこう質問されます。
・『買ってくれるお客さんはいるの?』
・『そのお客さんはどれだけいるの?』
・『お客さんはもっと増えないの?』
市場規模の見積りが甘ければ、投資家は市場の魅力を感じなくなりますから、結果的に評価を下げ、出資金額を小さくしたり、想定以上の出資比率を求めてきたり、あるいは、そもそも出資をしてくれなかったりします。
ですから、事業を正しく評価してもらいたいのであれば、投資家には、魅力的な市場を見せる必要があります。逆に、魅力的な市場を示し、投資家を納得させることができれば、事業は正しく評価されるんです。
3つの視点の市場規模
市場規模には3つの視点があります。TAM、SAM、SOMです。ローマ字を覚える必要はないと思いますが、事業を進めていくと、ときどき出てくるワードだと思うので、それぞれのイメージと3つの関係性くらいは覚えておいていただければと思います。では詳しく説明していきます。
TAM
TAMは、実現可能な最大の市場規模で、市場における商品/サービスの総需要を示しています。TAMを明確化することで、投資家に対し、事業の長期的なポテンシャルを示すことができます。
しかし、明らかに十分大きな市場である場合は、あまり細かく説明する必要はないと思います。
例えば、ヘルスケアサービスの話をするのに、誰でも世界的に医療費が高騰していることは知っていますから、日本の医療費の詳細やこれからそれが増えていく話をしても、あまり意味がないからです。TAMはそれくらいラフでもいいということです。
SAM
SAMは、TAMの中で、特定の顧客セグメントに絞った市場を示します。会社が当面追求すべき目標市場を示します。
TAMと合わせて考えることで、参入可能なマーケットや顧客の選別が明確になります。大きなTAMに対し、なるべく多くのSAMを取れるか?を投資家に示せることが重要になります。
ほとんどの投資家は、このSAMを最も重要視すると思います。ですから、しっかりロジックを組んで、説明できるようにしておいた方がいいです。
SOM
SOMは、実際に直近で、自社が取得できる市場を示しています。
SOMは、短期的な売り上げの目標であり、重要な指標になります。SOMはSAMのターゲットをより絞っているイメージです。
このSOMが取れない場合は、SAMやTAMをとることはできないと投資家は考えます。
逆を言えば、短期間にSOMが取れていたり、取れるような兆候が見えている場合には、SAMやTAMあるいは、さらなる市場の拡大も期待できると判断されますから、資金調達タイミングで、それらをアピールできるようであれば、かなり有利に話を進めることができます。
すなわち、この3つの市場規模は、繋がっているんです。事業はSOMに始まって、SAMに成長し、さらにTAMへと拡大していくんですね。
投資家たちの本音
投資家は、その会社が成長するかどうかを判断する一つの指標として、市場規模をものすごく気にします。市場がどれだけあるのか?すごく興味を持っています。その市場が大きければ大きいほど魅力を感じます。
しかし、専門家でもない彼らにわかるはずがありません。専門家であっても未来のことは正確には判断できません。
一部の個人投資家を除いてほとんどの投資家は、市場規模の提示が曖昧だとうるさく言ってきますが、なぜ?うるさく言ってくるのか?というと、
投資家がベンチャーキャピタルであれば、LP、ファンドにお金を出してくれる人に説明して理解してもらわなきゃいけないですし、投資家が事業会社の場合なら、担当者は、うるさい上司に説明して納得させなきゃいけないので、窓口である彼ら自身が自信を持って説明できるデータがほしいと強く求めているからです。
彼らは腹の底から納得したいんです。
『納得さえさせればいいんだったら、じゃあハッタリでもいいじゃないか?』と思いかもしれませんが、そうでもありません。
彼らは論理的でないことを好みません。ロジカルに物事を考えますので、きっちり根拠のある数値をもって説明しないと納得してくれないんです。
すなわち、投資家たちは『上手に納得させてほしい』と思っているんですね。
ですから、会社側としては、できるだけ根拠あるデータを使って、しっかりとロジックを組んで、ハッタリでもいいから自信を持つことが大事なんです。
まとめ
今回は、”市場規模をどう表現するか?”をテーマに、
・ありがちな市場規模の見積り
・3つの視点の市場規模
・投資家たちの本音
について話をしました。
投資家がベンチャー企業の提示した市場規模をどう見ているのか?がわかったでしょう。魅力ある市場規模で彼らの心を掴んで、投資家からの資金調達をゲットしましょう!
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wrote by ひさつぐ
(本名:丹田 久嗣(たんだ ひさし))
職業 :経営コンサルタント
業務内容:資金調達、上場準備、社外CFO、その他経営コンサル
活動地域:大阪、京都、滋賀、その他(要相談)
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