【上場準備】上場を目指す会社の経理部門とは

別記事で、上場準備で気をつけるべき3つのことを説明しました。その中の1つとして、決算体制の整備をあげました。

 

経営者には経理業務に疎い方が多く、上場企業と非上場企業では、経理業務に大きく違うことを知らない方がたくさんいます。

 

もし、あなたの会社が上場を目指しているのであれば、この違いをよく理解しておかないと確実につまずきます。

上場準備で最も気をつけるべき3つのこと

今回は、”上場を目指す会社の経理部門とは”をテーマに、

 

・非上場企業の経理部門と上場企業とそれとの違い
・上場を目指すために必要な経理部門の体制

 

について話をします。

 

これできっと、非上場企業の経理業務と上場企業のそれとの違いがわかり、上場に向けて、しっかりとした経理部門体制を敷くことができるようになるはずです。

もくじ

非上場企業の経理部門と上場企業とそれとの違い

非上場企業における経理業務は、税務会計に重きが置かれています。税務会計とは、企業の活動状況から税額を計算し、国や地方自治体に税務申告するために行う会計です。

 

税金計算を目的とした会計で、税金を正しく計算するために必要な処理をし、税金計算に関係しないもの(税額に影響がないもの)は処理がしないものがあります。

一方、上場企業の経理業務は、財務会計が重視されています。財務会計とは、株主などの利害関係者に対し、財務状態・経営成績を正しく報告することを目的とした会計です。

 

上場企業においては、株主に経営状況を報告することが重要です。

税務会計と財務会計とは違う

税務会計では、処理しないが、財務会計では、処理の必要な科目があります。非上場企業には求められない、有価証券報告書の提出や四半期報告書の開示が求められます。月次決算も一般的に行われています。

 

税務会計では、儲けのことを所得といいます。

所得(儲け)=益金ー損金

財務会計では、儲けのことを利益といいます。

利益(儲け)=収益ー費用

税務会計の益金と財務会計の収益は異なります。

益金 ≠ 収益

収益にはなっても益金にはならないものとして、

 

・税金の還付金
・受取配当金

 

などがあり、

 

また、益金にはなっても収益にならないものがあります。

 

税務会計の損金と財務会計の費用も異なります。

損金 ≠ 費用

費用にはなっても損金にはならないものには、

 

・交際費
・減価償却費

 

などがあります。

上場を目指すために必要な経理部門の体制

業務量の違い

非上場企業では、一般的に、日々の会計データ入力は自社で行い、決算時に税理士がそのデータの確認・修正を行い、

その後、決算書・税務申告書を作成し、会社は、その決算内容の説明を受けて、問題がなければ、社長が申告書に署名捺印し、決算業務を終了させます。

本来は、取締役会・株主総会承認等の手続きを踏むのですが、役会や総会は開かれず、議事録のみで済ますケースが多くあります。

 

また、非上場企業は有価証券報告書などの提出義務はなく、上場企業に比べ、決算業務が簡略化されています。

 

したがって、中小企業では、経理部門のメンバーは、経理業務以外の業務を兼務していることが多いです。

 

上場企業の決算業務は、決算終了まで財務担当者が対処します。

 

決算数値の確定後は、株主総会召集通知発送のために、会社法に基づき、

 

・貸借対照表
・損益計算書
・事業報告

 

等の作成を行い、承認・監査を経て、株主に向けて発送します。

また金融商品取引法に基づく、

 

・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書

 

等の作成をし、さらには、税務申告書の提出、株主総会開催、有価証券報告書提出、と続きます。

 

このように、非上場企業と上場企業で、作業量・質・速さで、比べものにならないくらいのボリュームとなり、経理担当者は、経理の特定分野を専門的に行うことが多いです。

経理担当者の能力の違い

非上場企業では、正しく税金を支払うことを目的とするため、一般的には、税制動向をみながら、経理担当者と顧問税理士と協力し、経理処理を進めていきます。

具体的には、顧問税理士の指導の下で節税を考えながら進めていきます。

したがって、非上場企業では、それほど専門知識を持たなくても経理業務はできるので、専門知識を持たずに、経理業務しているケースもあります。

 

上場企業では、

 

・経理処理ルールの文書化
・統一化

 

および、その運用が求められます。

 

税法ベースと金商法ベースの経理処理の違いの理解も必要です。監査法人による会計監査も受けます。

 

ですから、担当者といえども、ある程度の専門知識がないと、太刀打ちできません。

また経理部門の管理者は、専門知識はもちろんのこと、部門メンバーの業務管理や監査法人との調整など、相当なマネージメント能力が必要になります。

必要な経理部門の体制

上記で示したとおり、非上場企業の経理スタッフと上場企業の経理スタッフとでは、必要な知識は大きく異なります。

上場を目指す会社は、非上場企業の経理管理体制から大きく変更しなければいけません。

上場企業を目指す会社の経理部門のマネージャーは、金商法や会社法を理解し、監査基準など最新情報を熟知していて、監査法人とのコミュニケーションが十分に取れ、スケジュール管理や部員のマネージメントができる人が好ましいです。

マネージャー次第で、経理部門のパフォーマンスが決まると言っても過言ではありません。ですから、マネージャーは、報酬が多少高くとも、スキルの高い人を雇うべきです。

重要な業務を行うメンバーは、金商法や会社法を理解していることが望ましいですが、経理業務には、ファイリングなど雑用も含め、様々な業務がありますから、メンバー全員が金商法や会社法を理解してないと、ダメということはありません。

キーパーソンはマネージャーです。そのマネージャーがやりやすい経理部門を作ることが重要です。

まとめ

今回は、”上場を目指す会社の経理部門とは”をテーマに、

 

・非上場企業の経理部門と上場企業とそれとの違い
・上場を目指すために必要な経理部門の体制

 

について話をしました。

 

これできっと、非上場企業の経理業務と上場企業のそれとの違いがわかり、上場に向けて、しっかりとした経理部門の体制を敷くことができるようになるでしょう。

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wrote by ひさつぐ
(本名:丹田 久嗣(たんだ ひさし))

職業  :経営コンサルタント

業務内容:資金調達、上場準備、社外CFO、その他経営コンサル

活動地域:大阪、京都、滋賀、その他(要相談)

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